東京地方裁判所平成30年(ワ)第21645号 

平成30年12月13日 判決言渡

主文

1 被告は,原告に対し,別紙発信者情報目録記載の発信者情報を開示せよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

 主文と同旨。

第2 事案の概要等

1 事案の要旨

 本件は,弁護士である原告が,サーバレンタル事業等を営む会社である被告に対し,原告においては,被告がその顧客に提供しているレンタルサーバ(特定電気通信設備)を用いてインターネット上に公開されている別紙ウェブページ目録記載のウェブページ(以下「本件ウェブページ」という。)上の記載に係る情報の流通によって名誉権を侵害されたものであり,本件ウェブページの発信者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のために必要であるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,上記権利の侵害に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者に おいて争うことを明らかにしない事実である。)

⑴ 当事者

ア 原告は,東京弁護士会に所属する弁護士である。

イ 被告は,サーバレンタル事業等を営む株式会社である。

⑵ 本件ウェブページ

 本件ウェブページ(不特定の者から受けた送信要求に応ずることで不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信〔特定電気通信。法2条1号〕を行うものである。)は,被告がその顧客に提供しているレンタルサーバ(特定電気通信設備。法2条2号)を用いて,本件発信者により,平成29年11月14日頃にインターネット上で公開された(被告が提供している本件ウェブページに係るレンタルサーバを以下「本件サーバ」という。)。

 本件ウェブページ中の「告発状」と題する記載部分(以下「本件記載部分」という。)には,被告発人の1人として原告(小倉秀夫東京弁護士会)が掲げられた上で,「第一告発の趣旨」として「被告発人の行為は,以下の罪名に該当」する旨の記載がされ,「第二告発の罪名」として「脅迫」及び「(組織的な犯罪の処罰及び収益の規制等に関する法律)別表第二の三十二公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のための資金等の提供等の処罰に関する法律第五条(公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとしての資金等の提供等)の罪」との記載がされ,「第三告発の事実関係と証拠」として「明らかに首謀者佐々木亮,悪魔の提唱者@6CLW77Y102を首謀者とする共謀脅迫事案である」との記載がされている(甲1)。

⑶ 被告による本件発信者情報の保有

 被告は,本件発信者に係る本件発信者情報を保有している。

3 争点及びこれに関する当事者の主張

⑴ 本件ウェブページに係る情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか否か(争点1)
ア 原告の主張

(ア)一般の閲覧者の普通の注意と読み方によれば,本件記載部分は,原告が,佐々木亮らと共謀して,何者かを脅迫し,又は公衆等脅迫目的の犯罪の実行のために利用されるものとしての資金等の提供等の罪を犯し た旨の事実を摘示するものである。そして,このような事実の摘示は,原告の社会的評価を低下させるものである。

 「告発をする」又は「告発をした」旨の摘示がされている場合,その読み手には,告発をしようとしている者又は告発をした者においては,事実関係を十分調査し,証拠を検討して犯罪の嫌疑をかけることを相当とする客観的根拠を確認したものと認識され,被告発者においては,実際にそのような罪を犯したのであろうと認識されることになるのであって,後記イの被告の主張には,理由がない。

(イ)本件発信者が本件記載部分の被告発者に原告を加えたのは,自己の 見解を批判した原告に対する恨みによるものであって,本件記載部分の うち原告に関する部分については,専ら公益を図る目的に出たものとは認められない。また,原告が「脅迫」の罪又は「公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のための資金等の提供等の処罰に関する法律第五条(公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとしての資金等の提 供等)の罪」に該当する行為又はその共謀をしたとの事実はないし,原告がそのような行為をしたと信ずるに足りる根拠もない。したがつて,本件ウェブページに係る情報の発信に関し,違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情は存在しない。

(ウ)以上からすれば,本件ウェブページに係る情報の流通によって原告の権利が侵害されたことは,明らかである。

イ 被告の主張

 告発状が捜査機関に提出されたとしても,捜査の端緒となるにすぎず,捜査機関に告発状を提出しても,その事実をもって直ちに犯罪の成立が推認されるものではないから,告発状を提出した事実を公表したり,告発をする意思があることを表明したりしても,そのことをもって,告発の対象とされた者の社会的評価が低下するものではない。そして,本件記載部分は,告発状という体裁をとり,原告を被告発人として列挙し,具体的な罪名が記載されているものの,原告が実際に犯罪を構成する行為に及んだことを示す具体的な記載はない。したがつて,本件記載部分が原告の名誉権を侵害するとまではいえない。

⑵ 原告において本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか否か (争点2)
ア 原告の主張

 原告は,名誉権侵害による不法行為に基づ<損害賠償を求めるために本件発信者情報の開示を求めるものであるから,原告においては,本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

イ 被告の主張

 争う。

第3 当裁判所の判断

1 本件ウェブページに係る情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるか否か(争点1)について

⑴ 本件記載部分は,一般の閲覧者の普通の注意と読み方によれば,原告が,佐々木亮らと共謀した上で,脅迫罪に該当する行為,又は公衆等脅迫目的の犯罪の実行のために利用されるものとしての資金等の提供等の罪に該当する行為をした旨の事実を,東京地方検察庁検事正宛ての告発状という形式によって摘示したものということができる。

⑵ そして,「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の告訴,告発その他の申告」をすることは犯罪として処罰の対象となるものとされていること(刑法172条)や,合理的な根拠もなく告発をする行為が被告発者に対する不法行為となり得ることも明らかというべきことからすれば,一般の閲覧者が上記⑴のような本件記載部分を閲覧した場合には,その内容について相応の根拠があり,一定の真実が含まれているからこそ,原告について「脅迫罪」又は「(組織的な犯罪の処罰及び収益の規制等に関する法律)別表第二の三十二公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のための資金等の提供等の処罰に関する法律第五条(公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行のために利用されるものとしての資金等の提供等)の罪」により上記⑴のような告訴がされようとしているものと考えるのが通常であって,本件記載部分に係る情報の流通により,原告の社会的評価が低下したことは明らかというべきである。

⑶ また,本件における全ての証拠を検討しても,この点について違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情は認められない。

⑷ そうすると,争点1に関する原告のその余の主張の当否につき判断するまでもなく,本件ウェブページ中の本件記載部分に係る情報の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるものというべきである。以上において述べたところと異なる被告の主張は,採用することができない。

2 原告において本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか否か(争点2)について

 弁論の全趣旨によれば,本件において,原告は,本件発信者に対して名誉権侵害による不法行為に基づく損害賠償を求めるために本件発信者情報の開示を求めているものと認められるから,原告においては,本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものというべきである。

3 まとめ

 これまでに述べたところからすれば,被告は,本件ウェブサイトに係る開示関係役務提供者(法4条1項)に当たる。また,本件において同項1号及び2号の各要件が満たされることは,前記1及び2において述べたとおりである。そうすると,原告は,被告に対し,同項に基づき,本件発信者情報の開示を求めることができるものというべきである。

4 結論

 以上の次第であって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。