Web日記

 Top Page  ◎感 想

1999/07/10

 権力者が自らの権力を実感するためには、なるべく理不尽な行為を強要するに限ります。日の丸掲揚、君が代斉唱の義務づけの論議を見ていると、結局その実際の目的というのは、文部省の役人の権力欲を満たすことにあるのかなという気がしています。「君が代」が、永久に天皇に支配され続けることを喜ぶサディスティックな歌と捉えるにせよ、単なるラブソングと見るにせよ、入学式や卒業式に相応しい歌ではないと思うのです。

 原誠「懲戒弁護士」(双葉社・平11)は、「自由と正義」に掲載された懲戒事例を紹介し、コメントを付けているもので非常に読みやすい書籍です。なかでも、注目すべきは巻末の統計でしょう。予測されたことではありますが、懲戒処分を受けているのは、50台が一番多く、ついで60台、40台となっています。弁護士会の幹部も、開業したての若手弁護士が不祥事を起こしているかのような誤解を受けかねない発言はいい加減やめるべきですね。

1999/07/04

 中古ゲーム問題東京訴訟第1審判決についての論評がネット上にいくつか現れましたので、リンク集に付け加えました。ネット上では、好意的な論評の方が多いようです。

 後藤啓二「インターネット上の誹謗中傷、詐欺その他違法・有害情報の現状と対策について(上)」ジュリスト1999年7月1日号118頁は、どういう事件が発生し、それらについてどのような処分が下されたのかを知る限度においては有益です。しかし、主に注釈部分で触れられている後藤さんの評価部分につては、疑問を挟まざるを得ません。

 「リンクとは単に別のページのアドレスの書き込みにすぎない等の理由で、違法なものにリンクを張る行為に責任を認めない見解」が、「リンク行為にいわば『治外法権』を認めるようなものではなかろうか」などというのは的外れの最たるものでしょう。リンクを張る行為に責任を認めない見解は、別に違法性を阻却せよといっているわけではなくて、幇助行為として処罰をするに足るだけの違法性ないし因果性がないといっているわけですから。

 また、「匿名により発信できない、匿名で発信しても容易に発信者が判明する仕組み」の導入を提言されていますが、それは、匿名でないと発信できない、だけれども健全な社会の維持発展に不可欠な情報発信の可能性を奪ってしまいます。そして、それは、人々の発信する情報には決して誉められたものではないものが少なからず含まれることはわかっていたにもかかわらず、通信の秘密や検閲の禁止などを定めて、「匿名による発信の自由」を守ろうとした憲法の趣旨に大いに反するといえるでしょう。

1999/06/17

 最近、事務所のパソコンを入れ替えました。PowerMac7500からG3Macに変わりました。これで自宅のiMac、携帯用のPowerBook2400(G3/320に置き換え済み)と、私の使用する3台のMacは全てG3Macになったわけです。

 今日は、事務所に週刊アスキーの人がやってきました。ネットストーキングの話について、私にインタビューをするためにやってきたのです。なんか法の無力さを強調することになってしまったのではないかとちょっと心配しています。

 今日の日経新聞を読んでいたら、SCEの人たちは、先ごろ出た中古ゲームソフト訴訟の東京地裁判決について、映画の著作物の範囲を拡大していこうという近時の著作権法改正の流れに反するという批判を加えていたそうですね。しかし、審議会の議事録を見る限り、著作物一般に頒布権や上映権を認めようという動きはあったものの、映画の著作物の範囲を立法により拡大しようという流れはないように思うのです。

 小森陽一=高橋哲哉編著「ナショナル・ヒストリーを超えて」(東大出版会・平11)は読むに値する文献です。ただ、小林よしのり程度しか理解できない人にでも理解できるレベルで書かないと、ファッションとしてのファッショに対抗できないんじゃないかという気がしてなりません。

1999/05/27

 日記の更新を約1ヶ月さぼっていました。

 今日は、中古ゲームソフト東京訴訟について、第一審判決が東京地方裁判所で下されました。ゲームソフトはそもそも「映画の著作物」にはあたらないから、そもそも頒布権はなく、メーカー(エニックス)には、中古ソフトの販売を禁止する権限はないという内容だったそうです(当日、私は、千葉地裁松戸支部で証人尋問(3人)→和解期日という強行日程だったので、判決の言い渡しやその後の記者会見に参加できなかったのです。)。

1999/05/09

 今日は、田植えをさせていただいてきました。江戸っ子の私には貴重な体験でした。

 『論座』1999年6月号の「情報化が歪める子供」特集には、「いまさら何を」という感想を持ちました。同誌では、宮崎哲弥「西部邁・小林よしのり批判」の方が面白いとは思いますけど、「論座」の読者層を考えたらもう少し平易な文章で書けないものかなあと思いました。

1999/05/01

 今日は、横浜国際総合競技場で、横浜F・マリノス名古屋グランパスエイト戦を観戦しました。試合は、二転三転して、とても面白かったです。

 ひつじ書房の松本功さんの「紀要を大学のサーバーに入れて インターネットで公開することのご提案」に私は賛同します。特に、法律解釈学の論文などは、弁護士や裁判官に知られれば裁判規範として採用される可能性が生まれてくるわけですし、立法論を扱った論文であれば、官僚や議員に知られることにより法案に生かされる可能性が出てくるわけですから、一部の研究者しか読まない紀要論文集に埋没させてしまうのはもったいないです。
 紀要論文集をわざわざお金を支払って購入する人はどうせほとんどいないわけですし。

1999/04/29

 今日は、一日だらっと休養していました。そういう日もあってもいいかなということで、自分を甘やかしています。

 松倉秀美=宮下佳之=寺本振透『よくわからん!? インターネット時代の法律入門』(インプレス・平11)は、インターネット・マガジンでの連載記事を単行本にまとめたものです。私も他人のことをいえた義理ではありませんが、最近は弁護士がコンピュータ雑誌にネットがらみ、コンピュータがらみの法律問題の解説記事を書き散らすことが増えているので、フォローするのが大変です(法律の専門雑誌ならよほどマイナーでない限りフォローできるのですが。)。そういう意味では、ある程度連載記事がたまったところで単行本にまとめてもらえると非常に助かります。

1999/04/28

 さあ、明日からゴールデン・ウィークです。しかし、私は、暦どおりです。しかも、ゲラ稿直しなどしなければなりません。なかなかスカッとは遊べないものです。

 角建逸『詰将棋探検隊』(毎日コミュニケーションズ・平7)は、芸術的といって差し支えのない詰将棋を、なぜその詰将棋がすごいのかがよくわかりように書いてあって、読むべき価値のある本です。なお、金子清志『詰将棋の著作物性について』というのもあるのですね。法律論としては不正確ですが。

1999/04/25

 最近は、このWeb日記も更新が遅れがちです。こんなことではいけませんね。

 木野評論第30号(特集 魅惑の『戦争』 ”殺すな”の基底を問う)は、個々的には玉石混淆の感がないわけではありませんが、全体的には読み応えがある特集です。私としては巻頭座談会がお気に入りです。

 岡崎哲二「江戸の市場経済」(講談社・平11)も、読み応えがあります。自由放任主義経済ではない、自主的な経済制度としての「株仲間」が評価されています。

 

1999/04/17

 一昨日は、「玉ひで」に行き、親子丼などを食べてきました。

 昨日は、知的財産権研究会に出席しました。ただし、テーマが特許法に関するものだったので、ただ聴いているだけでした。そろそろ、特許法も真面目に勉強しないといけないなと痛感しました。

 東京地判平10年11月30日判時994号258頁は、おかしな裁判例です。この裁判では、版画をできるだけ忠実に再現することを目的として撮影された平面的な版画の写真は「写真の著作物」といえるかどうかが争点となったのですが、「版画をできるだけ忠実に再現した写真を撮影するためには、光線の照射方法の選択と調節、フィルムやカメラの選択、露光の決定等において、技術的な配慮をすることが必要である」にせよ、「正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上、右認定のような技術的な配慮も、原画をできるだけ忠実に再現するためのものであって、独自に何かを付け加えるものではないから」そのような写真には著作物性がないと判示しました。

 この判決文を素直に読むと、「写真の著作物」の著作物性、なかんずく創作性は、撮影位置の選択の創作性にあるようにも読めるのですが、そうだとすると、例えば、先行者と同じ立ち位置で同じアングルで富士山の写真を撮影することもまた複製権侵害になってしまうのかなという危惧が生じてきてしまいます。

1999/04/13

 昨日は、大阪FLマスク・リンク事件のために、大阪に出張していました。新幹線の中で、宮城谷昌光「奇貨居くべし 黄河編」(中央公論新社・平11)を読みました。

 今日は、裁判所の地下の本屋さんで、高橋和之=松井茂記編「インターネットと法」(有斐閣・平11)と半田正夫「著作権法概説(第9版)」(一粒社・平11)を購入してきました。半田教授の本も、著作権法に関する文献がなきに等しかった数年前ならいざ知らず、今となっては・・・・なものとなってしまったような気がしています。

 また、上記「インターネットと法」の中で、「インターネットとわいせつ罪」の章を書いた山中敬一教授にも失望しました。罪刑法定主義って、条文に用いられている言葉を普通の人が普通に判断すればその条文にあたるとわかる行為のみを取り締まるっていうことなんじゃないかな、頭のいい人たちが頭をひねって難しい論理を使えば条文に用いられている言葉の意味をここまで広げられなくもないって範囲にある行為まで根こそぎ取り締まることができるっていうことになると、条文を見ただけでは、どこまでなら許されるのか普通の人は判断できなくなってしまって、罪刑法定主義の精神に反するんじゃないかなってだらだらと思ってしまいます。

1999/04/09

 昨日は、午前中甲府地裁、午後東京地裁八王子支部という中央線シリーズをこなしてきました。時間的に中途半端だったので、弁護士会の多摩センターによってきました。まだ建物が新しくてきれいでした。弁護士起案室の机にコンセントがあればもっとよかったのになと思いました。

 八王子の三省堂で藤原彰=森田俊男編「近現代氏の真実は何か--藤岡信勝氏の『歴史教育・平和教育』論批判」(大月書店・平8)を購入しました。「いかにも大月書店!!」という感は否めないものの、藤岡さんの本や、渡部昇一さんの本や、小林よしのりさんの漫画を読んで興奮してしまっている人は読んでみるといいのではないかなと思います。

 さらに、伊東元重「ミクロ経済学」(日本評論社・平4)を購入しました。レイアウトが結構きれいな本ですね。

1999/04/05

 最近は、司法試験受験生でも知っているような基本論点を理解できない弁護士が多くて困る、とある事件での控訴審での答弁書を書いていて思いました。質的なことを重視するならば、今でも司法試験合格者の人数は多すぎると思ってしまいます。今後合格者の人数ばかり増えて、まともな基本書を読めない人が大量に弁護士として排出されるようになったらどうなるのでしょうね。

 今日は、民事訴訟法学会から民事訴訟雑誌45巻が送られてきました(実は、民事訴訟法学会に所属していたりするんです。民事訴訟法については何の論文も書いていないのですが。)。また、赤坂の本屋で菊田良治「粉飾決算・取締役スケープゴート氏の悲しい体験」(日経BP社・平11)と武田亨「任天堂の法則」(ゼスト・平11)を購入してきました。まだ、菊田さんの本を途中まで読んだ段階ですが、かなり期待できます。

1999/04/03

 弁護士になって、とうとうマル5年がすぎ、6年目に突入します。自分にご褒美というわけではないですが、愛機であるPB2400にG3を載せてきました。速いっていうのは気持ちのいいものです。

 今日は、秋葉原の書泉で、田中康夫「それでも真っ当な料理店」(ぴあ・平11)を購入してきました。

1999/03/31

 最近は、変わった弁護士の相手をしなければならないので大忙しです。地裁で負けている事件の控訴審で、無条件で訴えを取り下げろなどと真顔で提案する勇気は私にはありません。いろいろな弁護士がいるものです。

 野口悠紀雄「インターネット『超』活用法」(講談社・平11)は、悪いとか内容がないとまでは言わないものの、きっとお忙しいはずの野口先生のお手を煩わせるほどの企画だったかなあという疑問が消えない作品です。

 最近、fjなんかでは、ポケットモンスターのパロディー化した作品を同人誌に載せた女性が警察に逮捕、起訴された件で盛り上がっています。パロディーの当否は措くとしても、その問題の同人誌を証拠物として押さえ、当該女性の自宅を捜索してその女性がそのパロディ作品の作者だということを示す物証さえ差し押さえてしまえばいいわけだから、逮捕せずに捜査が進められる事案だし、まして勾留延長までする必要性があるとは思えない事案ですね。わざわざ勾留延長請求した検察官も問題ですが、それを認めてしまった裁判官はもっと問題です。

1999/03/27

 今日は、愛機PB2400のバッテリーの接続等がこのごろおかしかったので、秋葉原にある日本NCRにいって、修理してもらってきました。パワーブックにはアップルケアをつけてあるので、特にお金はかかりませんでした。

 三浦正広「著作者人格権の法的性質に関する一考察  一般的人格権と個別的人格権の二重構造論  岡山商大法学論叢7巻75〜114頁は、労作といえるのかも知れませんが、著作者人格権を「個別的人格権」と捉えるのとどういういいことがあるのか、ざっと読んだ限りではわかりませんでした。

 花本広志「人格権の財産的側面  パブリシティ価値の保護に関する総論的考察」獨協法学45号241〜259頁は、この分野に関しては、標準的な論文だと思います。ただ、私は、パブリシティ権に関する従来の通説・判例的な議論に不満があるんです。有名人には、経済実体上顧客誘因力があることは認めるんですが、そのことから直ちに、立法を経ずに、その顧客吸引力に対する排他的独占権を、その有名人ないし所属事務所に認めてしまうというのはおかしいと思うんですよね。

 

1999/03/25

 今日は、お昼に相手方代理人と東京弁護士会の弁護士控え室で折衝を行った後、時間がちょっと空いていたので、弁護士会の図書館に寄って、文献を漁ってきました。

 畑浩人「刑事弁護活動の日常と刑事弁護士論の展開  『刑事専門』弁護士の観察研究によって  神戸法学雑誌48巻2号357頁〜412頁は、刑事弁護のあり方を考えていく上で参考になりました。刑事弁護専門でもやっていかれるのか、という素朴な感慨の方が先に立っていたのかも知れません。

 鈴木秀美「インターネットと表現の自由  ドイツ・マルチメディア法制の現状と課題」ジュリスト1153号91頁〜98頁は、ドイツ語の文献を読めない私には貴重な文献です。

 また、少々古いけれども、岡田米蔵=梁瀬和男「広告法規」(商事法務研究会・平5)の〜251頁〜278頁は、キャッチフレーズからコマーシャルフィルムまでのいろいろな広告表現につき、著作物か否か、著作物だとすれば著作者は誰で、著作権者は誰なのか、ということが検討されていて面白いです。

1999/03/24

 今日は、自宅の爆発状態がいい加減気になったので、少し本などを整理しました。いくら仕事が仕事だとはいえ、本を買いすぎるのがいけないのだと思いつつ、安藤和宏「よくわかるマルチメディア著作権ビジネス 増補改訂版」(リットーミュージック・平11)とジョナサン・ローズナー「サイバー・ロー インターネットの法律」(中央経済社・平11)を購入しました。安藤さんは、さすがは葛飾区出身だけあって、「著作権と中古ソフト問題」を「中古ゲームソフト販売について合法論を展開する優れた書籍」と紹介してくださっています(294頁)。「サイバー・ロー」の方は、内容はアメリカ法に関するものなので、そこでの議論をそのまま日本に持ち込むことはできないのだろうと思いましたが、それ以上に、著者よりも訳者の方が大きく表示されているって、やっぱり倫理的に問題がありそうな気がするなと私は思ってしまいました。

1999/03/23

 今日は、複数の依頼者に約束をすっぽかされたので、事務所でおとなしく準備書面を書いていました(物を書いているときは独り言やら何やらをぶつぶつ言っているので、おとなしくはないという話はあります。)。

 佐々木良一「インターネットセキュリティ入門」(岩波書店・平11)を購入しました。岩波新書だから仕方がないのですが、特にどうだという感じを私は持ちませんでした。たぶん、この種の問題に疎い、真面目なサラリーマンあたりを読者対象にしているのでしょう。

 今日の日経新聞に「利益を生む速い司法」なる記事が掲載されていましたが、日本経済新聞社におかれましては、「速い司法」実現のため、強制力のある模索的証拠開示手続きをアメリカ並に認めるように、財界の方々を説得してもらいたいものです。日本の司法制度とアメリカの司法制度との違いは法曹人口だけではない、というごく単純な事実に目を向けるべきでしょうね。

 

1999/03/20

 今日は、川崎市中原区で講演を行いました。

 松本功「学術情報ジャーナリストを育てよう」は大変示唆に富みます。法律情報についても、「トンデモ」の類がネット上や、はたまた紙メディア上にあふれています。しかし、学会誌も、弁護士会も、何がトンデモなのかの情報公開を行っていません。著作権などの分野は、特にトンデモな情報で溢れかえっています。まことしやかな肩書きを名乗る人が、専門家からみたら謝った論理で導き出された非常識な結論を市民に押しつけて、脅しつけています。ほんと、何とかしないといけませんね。

1999/03/19

 今日は、3月18日に下された三国志III事件の高裁判決の判決文を入手することができました。論点が多岐にわたる事件ですので、おって評釈をしようかと思っています。とりあえずいえることは、この高裁判決で、三国志IIIというゲームは「映画の著作物」にあたらないと判示されたことは大きいということです。ここでも「動画があれば映画の著作物である」というテーゼが崩されました。

1999/03/17

 今日は、区民法律相談を行ってきました。私は、「主張するのは自由ですが、相手が認めてくれるかどうかはわかりませんよ」とか「ぐずぐず言っているよりは裁判を起こしてしまった方が結局早いし安上がりですよ」と平然と言ってしまう人なので、相談者がどれだけ納得してくれているのか、ちょっと不安です。

 今日は、林信吾「自主規制せず  世紀末ニッポン101話」(KKベストセラーズ・平11)を購入して読みました。サッカーのこと、文房具のこと、翻訳のことなどいろいろな話題についてのショート・エッセイが101集められたものですが、小林よしのり氏の「戦争論」を読んで、「愛国心」にかぶれてしまっている家族や友人をもってお困りの方は、この本を困った人にプレゼントするのもいいのではないかと思いました。

1999/03/15

 明日朝10時から証人尋問があるので、今日は既に神戸に来て、ホテルに宿泊しています。

 神戸に向かう新幹線の中で、辰巳直彦「著作物の無形的伝達と有体的頒布  一般的頒布権の導入を中心として  コピライト1999年2月号25頁〜45頁と羽室英太郎「ハイテク犯罪捜査における技術的留意点について(下)」警察学論集52巻3号133頁150頁、作花文雄「インターネット・衛星放送と準拠法  グローバル・ネットワーク時代における秩序の形成に向けて  コピライト1999年2月号46頁〜55頁を読みました。

 辰巳先生の論文は、基本的に講演録ですので非常に読みやすいです。その中で、用尽論をわかりやすく述べてくれている、ナイスな論文です。

1999/03/14

 今日は、知的財産権研究4に所収予定の原稿のゲラ稿に手を入れていました。「著作権と中古ソフト問題」(システムファイブ・平11)が法律の専門家ではない読者を対象としたのに対し、こちらはがちがちに法律専門家を対象としています。

 

1999/03/12

 今日は、セイコー・インスツルメンツの「PHS DATA LINK 」を購入しました。これで出張の際、グレ電を探さずに、メールの送受信ができます(部屋にモジューラジャックのついていないホテルってまだ多いですしね。)。

 今日、午前中は、M新聞社を相手方とする損害賠償請求事件(名誉毀損)の弁論期日に出席しました。新聞社側は、当該記事を作成した新聞記者を証人として請求しただけでした。きっと、「天下のM新聞の記者がおそれ多くも真実だというのだから、記事の内容が真実であることを疑う方がおかしい」ということなのでしょう。いまだに、「被害者」である「A子さん」が、具体的に誰のことを言っているのかよくわかりませんが。

 滝川あおい「定期借家権推進の¨首謀者″建設省が吊し上げられた日」週刊法律新聞平成11年3月5日号8頁は、読むに値する投稿記事です。基本的には、坂上富男衆議院議員の予算委員会での定期借家権に関する質疑の傍聴記なのですが、定期借家権推進の元となる資料に誤りがあるのだということを確認することができます。

1999/03/11

 今日は、東京大学にて、中古ソフトと著作権問題について、研究発表をしてきました。その後の質疑等を含め、大変勉強になりました。

 東京地判平成10年10月30日判タ991号240頁は、次の2点において画期的な判決であり、今後著作権法に関する議論の中心の一つになっていくように思います。つまり、

他人の言語の著作物について、その趣旨に忠実に要約して引用しても適法な引用にあたるとした点

著作権法43条により他人の著作物を翻案して利用することが認められる場合、著作権法20条2項4号にいう「やむを得ないと認められる改変」として同一性保持権侵害にあたらないとした点

が画期的なのです。判決文からは、著作権法50条との関係をどうするのかが必ずしも明らかではありませんが、方向性としては正しいのではないかと私は思っています。

1999/03/10

 今日は、午前中、水戸に行って来ました。弁論準備手続き終了後、ちょっと偕楽園に寄ってきましたが、梅がちょうど良いくらいに咲いていました。1時間くらいさぼっても文句を言われないというのは、裁量労働制の良いところです(逆に、経営者や上司に、それを許す度量がないところには向かない制度です。)。

 社団法人著作権情報センター編「新版 著作権辞典」(出版ニュース社・平11)と、木村順吾「情報政策法 ネットワーク社会の現状と課題」(東洋経済新報社・平11)を買ってきました。しかし、「著作権辞典」の定価が1万2000円(+消費税)というのは、どう考えても高いと思います。

1999/03/09

 今日は、午前中は、詐欺被告事件(冤罪事件です。)の被告人質問を行っていました。

 午後、ゲームソフトメーカーから中古ソフトの販売差止訴訟を起こされていた株式会社ドゥーが、突然請求を認諾したという一報が入り、大変驚いてしまいました。

 ドゥー裁判は、今日、口頭弁論が終結の予定だったはずなのですが、事実関係・法律解釈とも、原告の主張がそのまま正しく、またそのとおり裁判で認められそうだということであるならば、「事実・法律解釈ともにすべて認める旨を表明して」まで請求を認諾するメリットというのは、弁護士になってまだ5年弱の私にはちょっと見当がつかないところです。

 Mr.Childrenの「光の射す方へ」という歌はいい歌ですね。

1999/03/08

 今日は、大阪FLマスク・リンク事件の公判に出席するために大阪地方裁判所に行きました。この裁判は、次回以降、あっと驚く展開になります。大阪周辺の方は、傍聴されると面白いのではないかと思います。

 いま、このページを新幹線の中で作成しているのですが、ニフティが起こしたスパム・メールの差止めを求める仮処分について、もう決定がでているはずです(どっちに転んだかはわかりませんが。)。もし仮処分が認められたら、是非とも本裁判も提起してもらいたいものです。いらない広告がたくさん送られてくるのは、何もネット社会に限られたことではありませんので、その裁判の判決の論理の如何よっては、マンションのポストなどに大量の広告を送りつけてくる会社に損害賠償等を起こして勝てそうかどうかを占うことができそうです。

1999/03/07

 昨日、今日と、書かなければいけない原稿は沢山あるのに、あまりはかどりませんでした。今年はちょっとオーバーワーク気味(収入にはつながっていませんが)なので、そろそろぱあっと遊んだ方がいいのかなと思ったりなんかします。

 今日はJR上野駅まで新幹線の切符を買いに行った帰りに、丸井上野店の地下の本屋で、と学会「トンデモ本1999」(光文社・1999)を買ってきました。まあ、相変わらずですね(って「取り上げられる方」がですね。新解さんは気の毒ですけど。)。

1999/03/06

 昨日、確定申告を済ませてきました。といっても、私は、勤務弁護士といって、基本的には固定給をもらって事務所から指示された事件処理を行う立場なので、事務所とは関係なしに受任した事件の報酬等や原稿料を雑所得として申告するだけなのですが。

 安田弁護士の保釈請求がまた却下されました。裁判所は、こと保釈に関しては、刑事訴訟法などの法律を無視して、保釈請求を却下します。アメリカなら、殺人の容疑でも保釈を受けられるということはさておくとしても、強制執行妨害罪(96条の2)という「2年以下の懲役又は50万円以下の罰金」程度の法定刑しかない(2年以下の懲役というと、酒酔い運転と一緒)のに、第1回公判が終わっても保釈しないというのは、そもそも失礼ですね。

 いずれにせよ、本件で「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるのなら、およそ「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」がないとされる場合というのは考えがたいので、保釈請求があれば原則としてこれを許さなければならないとする刑事訴訟法89条は、裁判所によって、事実上なきものにされているわけです。

 橋本治「貧乏は正しい 僕らの未来計画」(小学館・1999)は、『ヤングサンデー』に連載されていたものを纏めたものですが、視点が鋭いので、読むに値する本です。特に、夫婦別姓問題について論じている277頁以下は、別姓制度を推進したいと考えている方は必ず読むべきだとまで思ってしまいます。

1999/03/04

 今日は、甲府に行って来ました。もう少しで桃の花が咲く季節になっていくのでしょうね。

 昨日は、安田弁護士の第一回公判が行われたようです。小柳次郎「安田弁護士を支援する社長日記」が逐次報告してくれるので便利です。でも、この事件で、安田弁護士が未だに保釈されていないということの不当さをきちんと追いかけるマスコミがないというのは結構問題が大きいですね。

 川北隆雄「官僚たちの縄張り」(新潮社・1999)は、今の官僚制度の問題点を手軽に知るのにちょうどいい本。

 司法関係にも、公証人等の天下り制度があるんですよね。まとまった時間ができたら、まとまったものでも書こうかなと思っています。

1999/03/02

 今日は、カプコン他対アクト他 中古ソフト販売差止請求事件の弁論期日に出席するために大阪地方裁判所に行きました。そのうち、ARTSのホームページにそれぞれが作った準備書面が掲載されることになると思います。

 しかし、ゲームメーカーの人たちって、なんで「ゲームソフトは、『映画の著作物』なんかとは全然違うんだ」と誇りを持って主張しないのでしょうね。「映画の著作物」ということだと、「創作的な表現」として評価されるのは、映像表現(+音声)にすぎないわけですが、でもゲームソフトのクリエーターの創作性って、そういうところにあるわけではないと思うんですよね。インベーダーだって、パックマンだって、三国志シリーズだって、映像を眺めて、音を聞いているだけだったら、つまらないです。

1999/02/28

 今日、やっとPanasonicのSUPERDISKを導入しました(このHPは、初代iMACで作成しています。)。

 金子勝「遠景としてのマルクス 『制度化された経済学』の閉塞の向こう側」大航海1998年12月号59〜65頁は、示唆に富む論文です。「近経・マル経といった対抗軸は過去の遺物であり、時代の軸は新古典派対反新古典派に移ってしまったということである。」との指摘に私は賛同します。ということで、新宿の紀伊国屋書店に行って、アマルティア・セン「合理的な愚か者  経済学=倫理学的探求」(勁草書房・1989)を買ってきました。その他、今村仁司「思想の現在とマルクス」大航海1998年12月号40〜58頁のうち52頁の「コミュニズムは共産主義か」以下の部分も大変参考になりました。

1999/02/27

 一昨日の日記でふれた最高裁判決ですが、もう最高裁判所ホームページに掲載されているのですね。東京地裁も早く見習ってほしいものです。

 最近の注目判決は、なんといっても、キャンディ・キャンディ事件でしょうか。中古ゲームソフト事件が、いくら注目を集めているといわれていても、一般傍聴者がほとんど来ないのに対して、向こうは傍聴券まで出るのだから、所詮ゲームはアニメにかなわないのかなあ・・・とちょっと悲しい気持ちになりました。

 それはともかく、原作者の創作性は漫画のストーリー展開に反映しているにすぎないのに、ストーリー展開とは直接関係ないキャラクターの図柄についてまで原作者が権利行使することが許されるのかということが問題ですね。「原著作物の創作的な表現が再生されている場合には、その限りにおいて……原著作物の創作的な表現に依拠して類似の著作物が作成されたと評価して著作権の権利範囲を及ぼすべきであるが、この類似の範囲を超える場合にはもはや著作権の権利範囲外と解することが、創作的な表現を保護する著作権制度の趣旨にかなう」(田村善之「著作権法概説」106頁(有斐閣・1998))とすれば、プリクラやキャラクターグッズに描かれた図案自体には水木杏子さんが考えた創作的なストーリーは再生されていない以上、水木杏子さんがキャラクターの図柄にまで権利行使するのはおかしいのではないかなととりあえずのところ思ったりします(漫画家、原作者の主観的思い入れについては、横浜カンナさんのWeb日記が参考になりました。)。

 話はがらっと変わりますが、伊藤光晴「日本経済 喪われた10年」(『This is 読売』1999年3月号188〜205頁)は面白かったです。

1999/02/25

 上昇対エニックスの事件、次回結審予定です。早いです。訴状を提出したのが、去年の10月5日ですからね。

 岡崎久彦「繁栄と衰退と オランダ史に日本が見える」(文芸春秋・1999)は、オランダ近代史を比較的読みやすく解説したものとして読む分にはいい本といって差し支えないでしょう。現在の日本に話題を振っている部分には、「いかにも文春」という感じがしますが。

 今日帰ってからテレビのニュース番組をつけると、脳死一色です。医者も、脳死者(の家族)も迷惑でしょうね。病院にマスコミが押し掛けて待機するのって、倫理的にどういうものでしょうね。わたくし的には、医師のミスでガンの発見が遅れた患者はすでに末期ガンだったというときに、延命の可能性があれば、医師の過失と患者の死という結果との間に相当因果関係ありとした最高裁判決が出たということの方が注目です。

1999/02/24

 今日は、裁判所に行かないで済んだので、事務所でたまった事務処理をこなして一日が過ぎました。

 藤田悟「図解 電脳・ネット犯罪撃退マニュアル」(同文書院・1999)は、法律的な部分に誤りがある(例えば、「わいせつ画像のモザイクを消すソフトを開発して販売した場合」公然陳列ほう助罪にあたるとしている(同書211頁)が、検察ですら、大阪FLマスク・リンク事件において、そのようなことを否定しているのに、いまさら何をいっているのでしょう(ネット犯罪の研究者が、まさか毎日のJAMJAMの「インターネット事件を追う」も岡村弁護士の法情報学日誌もチェックしていないわけでもあるまいに、という気持ちでいっぱいになります。))ことを別としても、今更という感じの本でした。別に、参考文献にインターネット弁護士協議会編「インターネット護身術」(毎日コミュニケーションズ・1998)が入っていなかったから怒っているわけではないんです。

 すが秀実=高澤秀次=宮崎哲弥「ニッポンの知識人」(KKベストセラーズ・1999)も、私個人としては、「ちょっと買って損したかな」という思いを抱きました。たくさんの人名と著書名は出ていたんですが、それだけという感じです。宮崎さんは、朝生とかで、やたら熱くなっている左右両翼のおじさんたちを片目にシニカルに発言しているときが一番生き生きしているような気が個人的にはするんですよね。

 明日は、上昇対エニックスの著作権に基づく差止請求権不存在確認訴訟の弁論期日があります。エニックス側は、牧野利秋さんという、知的財産部を中心に渡り歩いてきた元裁判官(業界では、結構有名人です。)が代理人に加わってきました。いよいよ面白くなってきたという感じです。

 

1999/02/23

 今日は、免責申立事件の集団審尋に、代理人として、臨席しました。弁護士5年弱で、個人破産事件通算2件目というのはいかにも少ないです(離婚事件0件というのはもっと少ないです。婚姻無効確認請求事件なら(被告代理人として)やっているのに・・・)。

 今日はお昼休みに事務所の近くの本屋に行って、鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」(東京創元社・1998)を買って読みました。「邪馬台国=岩手説」、「聖徳太子=蘇我馬子=推古天皇説」など、大変面白く読むことができました。

 あと、経済ものでは、伊東光晴「『経済政策』はこれでよいか」(岩波書店・1999)が面白かったです。日本が実は非常に所得分配の不平等が大きな社会である(このことは、橘木俊詔「日本の経済格差  所得と資産から考える  (岩波書店・1999)ということを前提にこれからの経済政策を考えていかないといけないですね。人々の嫉妬心に訴えかけるだけの、安直な規制緩和論には気をつけましょう。

1999/02/22

 月曜日の朝は、いつもながら頭がなかなか働きません。ということで、朝10時30分からの和解期日が実質的な仕事始まりです。

 今日は、「IMPACTION」の112号を、弁護士会の地下の本屋で見つけたので、買っていきました。知る人ぞ知る、「緊急特集 安田弁護士 不当逮捕を考える」というやつです。小柳次郎さんの「厳選館」やこの特集記事を読むと、事の本質がよくわかると思います。私も、住専の大口借主の刑事弁護を一件やっているので、そのひどさは身にしみてわかっています。

 また、弁護士会の図書館で、松本恒雄「ネット取引をめぐる法的問題点〜消費者保護を中心にして」法律のひろば1999年2月号17〜23頁をコピーしてきました。比較的読みやすいので、電子商取引にちょっと興味のある方は読んでみたらいかがでしょうか(って、まず「法律のひろば」を手に入れるのが一苦労でしょうか・・・)。

1999/02/21

 今日は、ひさびさに休日らしい休日をとりました。要するに、だらだらと過ごすことができたということです。書かなければいけない原稿はたくさんたまっているのですが・・・。

 1999年2月22日号のアエラは、めずらしく1960年代生まれを誉めていました。あまり肯定的に捉えられることが少ないだけに「たまにはいいかな」と思いました。

 網野善彦「日本論の視座  列島の社会と国家」(小学館・1990)は面白かったです。網野さんは、岩波文庫の「日本社会の歴史」でもそうですが、日本史の教科書ではさらっとしか取り上げられないような人たちを研究することで、権力者の消長にとどまらない日本社会の歴史をあぶり出すのが本当に上手ですね。「教科書で教えない歴史」を教えるならば、こういうものを教えるべきなんだろうなと私は思ってしまいます。

 Webでは大論争ページが面白かったです。古代史論争を和気藹々とやっています。

1999/02/20

 今日から、私もWeb日記をスタートします。毎日更新できるとは決して思いませんが(最初からそういうことでいいのだろうか)、よろしくお願いします。
 今日は、知的財産権研究会で「ときめきメモリアル事件」についての判例研究を発表します。自分でお金を出して買ったゲームを、どうやって遊ぼうと勝手ではないか、メーカー側にとやかく言われる筋合いはないということを、難しい言葉や論理を使って蕩々と述べてこようと思っています。

 

 

 

 

COUNTER since 1999/02/25