1.はじめに

1.1 なんで私がターゲットに?

 自分の/自社の名前をググったら、悪質なデマが掲載されたウェブページが多数検出される。自分の/自社のブログにやたら攻撃的なコメントが連日いくつも投稿される。自分の/自社のTwitterアカウントに、連日、言いがかりに近い言及tweetが寄せられる。Twitter上で自分/自社に関するデマtweetが広く流布される。

 現代社会を生きていると、時折こういう理不尽に遭遇することがあります。

 何ら恥ずべき言動をしていなくても、攻撃される時はされます。

1.2 攻撃された場合の対処の基本

 もちろん、「下らない人間の戯れ言だ。捨てておけ」として無視するのも、1つの手です。とりわけ、イデオロギーの違いに起因する糾弾であれば、糾弾している側のイデオロギーの方が社会的にはマイナーなので、さほど気にすることはないでしょう。

 しかし、とりわけ虚偽事実が流布されてなおこれを放置しておくと、自分/自社と現実社会で既に関係を持っている/これから関係を持とうとする第三者がこれを信じて、自分/自社との関係を断ち切ってしまう危険があります。また、とりわけ個人の場合、連日不特定多数人から中傷を受け続けているという事実自体が過度の精神的プレッシャーとなり、精神を蝕まれていく危険があります。

 したがって、そのようなトラブルに巻き込まれた場合、専門家に相談して、然るべき対策を講ずることが重要です。

 今日、そのような事態への対処を謳っているコンサルタント会社がいくつかあります。しかし、私は、そのような会社への相談をお勧めしません。と言いますのも、この種の誹謗中傷対策においては、どこかの段階で司法機関の助けを借りることが必要となるのですが、弁護士ではないコンサルタント会社では、司法機関の助けを借りる諸手続を行い得ないからです。最初から弁護士に相談されることをお勧めします。

 もちろん、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。ネットの構造、使用できる諸手続、書かれている内容に対する理解等をきちんと理解している弁護士というのは、実のところそう多くはありません(私も、他の弁護士さんから、こういう分野は自分ではよくわからないのでご紹介したいということで、相談者のご紹介を受けることが多々あります。)。ネット上の誹謗中傷問題に詳しい弁護士にまずご相談されることをお勧めします。


1.3 まず相談すべきこと

 ネット上での誹謗中傷に遭った場合に、弁護士にまず相談すべきことは、「これらは、放置しておいても良いものなのかどうか」です。どういうところで、どういう攻撃がどの程度の頻度でなされているかを見てもらった上で、これを放置して置いた場合に、どういう弊害が予想されるのかを判断してもらうということです。これは簡単そうに見えるかもしれませんが、深い経験と知識が求められる作業です。というのも、ネット社会と現実空間との繋がりを理解していないと答えが出ない問題だからです。


1.4 法的措置のあらまし

 放置しておくべきではないという結論に達した場合、ではどういう対処を行うべきかという検討をすることとなります。

 執りうる手段は、大きく分けると3つです。

  1. 問題の文章を削除させる。
  2. 問題の文章をアクセスされにくくする。
  3. 問題の文章を流布した人々を処罰させる。
  4. 問題の文章を流布した人に賠償をしてもらう。

 そして、問題の文章を流布した人々を訴えると言うことは、精神的苦痛を含む無形の損害について金銭を以て償ってもらうという現実的な利益以上に、そこで流布された内容についてはさしたる根拠がないことを裁判所に認定してもらうという利益があります。

 また、書き込みの内容から、同業他社が書き込んでいるのではないかとおぼしき時は、「誰が書き込んでいるのか」を突き止めること自体、重要な利益をもたらします。

 だから、それぞれの人が置かれている状況と誹謗中傷の内容から、「何を確実に押さえるべきか」という優先度の置き方が変わってきます。そういう意味で、ネット上の誹謗中傷対策は、専門の弁護士による戦略が重要だということになるのです。